【完】狂犬は欲望中毒。
懐いてくるくせに言うことは聞かない、らしい。
外は土砂降り。
窓ガラスに張り付いた水滴が、カーテンの隙間から垂れているのが見える。
よそ見なんかしている場合じゃない。
視線を戻すと、月を見た時に感じる『綺麗』な顔が私をジッと見つめていた。
「なあ姉ちゃん。
ぜってぇ俺の嫁にすっから、覚悟しとけよ」
「よ……よめ?」
「俺を"拾った"時点でもうお前は俺のもんだ」
ツッコミどころが多すぎる。
なんで私は今、しかもベッドの上で。
マンション前で、傷だらけで倒れていた男を助けただけなのに、押し倒されてるんだろう……。
しかも、拾った時点で俺のもんって。
拾った、いや、助けてあげたのは私なのに……
どうして主導権奪われちゃってるの!?
「ど……退いてくださ、」
「結婚してくださいだ?
なかなかせっかちだな、お前」
「言ってないですけど!!」
「怒った顔も俺好みだ」
「……」
あぁ……神様。
なぜこんな目に遭ってるのか、自分自身のことなのに分からないので教えてください。
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