【完】狂犬は欲望中毒。
「つか、おまえ急に離れんな……寒いだろうが」
小さなクシャミをする男。
怪我してるのに、風邪まで引くのはさすがに可哀想。
仕方ない……本当は嫌だけど。
このマンションに住むからと、引っ越しの際に間違えてお父さんの黒いスウェットも上下きっちりと間違えて持ってきてたんだっけ。
チェストの奥からスウェットを取り出し、男に差し出す。
「風邪引くので……お湯は溜めてないのでシャワーだけでも浴びてきてください」
「やる気満々じゃねーか」
「ちが……っ!もう嫌だこの人!!」
ケラケラと笑いながら私からスウェットを受けとる男は完全にからかっている。
ワンルームのおかげで案内されなくてもお風呂場に勝手に進んでくれた。