【完】狂犬は欲望中毒。
「おい」
「……っ、離せよ」
「いい加減諦めろって。
じゃねーと俺も本気で……」
こいつらに構っている時間なんてない。
松茂さんに怪しまれる前に、早く終わらせないといけないのに。
あまりのしつこさに俺の呆れも怒りへと変わる。
我慢できずにグッと拳を握った瞬間。
「左和季くん……っ!!」
聞こえてくるはずのない声が聞こえてくる。
焦って声のした方向に目を向けると、小羽が後ろから俺に飛び付いてきた。
「だめーっ!暴力絶対反対!!」
「……はあ……??」
なんでこいつがここに居る。
あっけらかんなこの状況に、俺は思わず黒髪男の胸ぐらから手を離してしまった。
「……っ、よそ見してんじゃねーよ左和季!!」
その隙に黒髪男が俺に向かって拳を突き出すが。
「ねぇ、あんたらいい加減空気読んでくれる?
左和季には勝てないってどうして分かんないわけ?バカでしょ、いやバカか、バカだ」
俺の顔の横スレスレで後ろから伸びてきた手が、黒髪男の拳を受け止める。
声からして美喜矢だと分かったが、横目で見て確認するとマジで美喜矢だったから美味しいとこ全部もっていかれた様な気がして口角が下がる。