【完】狂犬は欲望中毒。





しばらく走らせたバイクは坂道を上り、市街地から少し離れた公園に着く。



遊具がない公園は、車が通る道と草木に囲まれ。
夜で視界が暗く、生い茂る緑がしっかり見えなくても、嗅覚だけで自然を感じられる。


坂道が平になるまで上ると、駐車場にバイクを停めて小羽をおろす。




「わあ……!」



吸い寄せられる様に、数えきれないほどの街の灯りを見渡す小羽は、感動で無意識に声を出す。



俺も小羽の隣に立って、一面に広がる夜景を視界で楽しんだ。


「左和季君、すっごく綺麗だね!
 私ここ初めて来た!!」


「バイク走らせてた時に、たまたま休憩がてら寄ったら、あまりにも景色が綺麗でな。……今じゃ結構な頻度でここ来てんだよ。
 ここの展望公園は、街を一気に見渡せるから気に入ってる。」


「……」


「どうした?」


さっきまであれだけはしゃいでいた小羽が急に黙るから、顔を覗く。


暗かった世界が、遠く離れた街の灯りによって小羽の表情をよく見せるから自然と口元が緩む。



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