【完】狂犬は欲望中毒。





ごちゃごちゃと考え込む私に謝る松茂さんは、何やら面倒事には巻き込まれたくない様子で私の前から去っていく。



考えたって仕方がないと、俯いていた顔を上げると。


「……っ」


一瞬だけ、私の方に向けられたバイクのライトに目を細める。



さっきから鳴りっぱなしのエンジン音と人の行き交う声が倍になる。


増えたバイクから降りてきたのは、綺麗な女の人だった。


その後ろに何人もの特攻服を纏う女の人達は、ここにビクビクと怯えてやってきた私とは違って
胸を張って自信ありげに口角を上げていた。




「すっげぇ綺麗な人だな」


「あれが噂の雪紅(ゆきべに)か。
 女の暴走族って大したことないって思ってたけど、思わず見入っちまった」



「雪紅っつたら、美女の集まりだろ?狙ってる奴ら多いらしいぜ?
 特に雪紅の総長有栖川(ありすがわ)乃々花(ののか)はずば抜けて美人だよな~」






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