【完】狂犬は欲望中毒。
さっき感じていたモヤモヤが、晴れたように消えていく。
どうしてだろう、あんなに痛かった胸が嘘みたいに
ときめきへと変わって。
他の人を気にする暇さえないくらい、今は左和季君のことしか見えてない。
「……小羽ちょっと待ってろ」
「……へ?」
余韻に浸りたいのに。
今さっきまでの甘い雰囲気はどこへやら。
左和季君は眉間にシワを寄せながら、顔つきを切り替え私から離れる。
どこへ行くんだろう?と、不思議に思いながら左和季君の背中を目で追っていると。
いつのまにか蛇狼の輪にひとりで近づいていた有栖川さんの前に左和季君が立つ。
「なに勝手に総長に近づこうとしてんだ。」
「駄目なの?」
「当たり前だ」
「あら、挨拶するくらいいいでしょ?
蛇狼って私たちより後にできたチームよね。
それなのにこんなに人数集めて、どういう男が仕切ってるのか気になっちゃうのが不思議じゃない?」
「別に。こっからは有料だ、総長と話したきゃ土産のひとつやふたつくらい持ってこい。話はそっからだ」