【完】狂犬は欲望中毒。
ピリついた雰囲気に見えない渦が巻く。
有栖川さんは風で靡いた髪を耳にかけ、挑発するように口角を上げた。
「いいじゃない別に。違うチームの総長同士仲良くやろうって、そのための集会じゃないの?」
「俺は一度もお前のこと見たことないから信用できねーんだよ。
危険人物をうちの頭に警戒もなしに近づける方がバカなんじゃねぇの?」
綺麗な人にも容赦ない左和季君の態度に、有栖川さんは少し驚いた表情を見せた。
他の人達も、さっきまで自分達の会話に夢中だったのに
ただならぬ雰囲気に気づいて、いつの間にかほとんど全員が左和季君達を見ている。
「……君、五月女左和季君よね?」
「へぇ、俺のこと知ってんの」
「この世界じゃ有名よ。瞑静をひとりで潰したって聞いたけど、それが本当なら危険な人ね。
いつ雪紅に手出してくるか、不安でしょうがないわ」
「別に。瞑静の奴らが蛇狼にちょっかいかけなきゃ良かっただけの話だ。
お前らが蛇狼に手出しさえしなければいい話。それ以外に俺がお前らに構うこともない」
「……へぇ、雪紅に興味ないんだ」
「まったく」