【完】狂犬は欲望中毒。
「おい、お前らさっきから近い。」
ムスッとした顔で左和季君が、私と美喜矢君の間に割ってはいる。
少し不機嫌そうだけど、さっきまでのピリついた雰囲気が左和季君から消えていて、分かりやすくホッとしちゃう。
「なに嫉妬?そんなのする暇あるならあの女の相手したら?」
「バカ言うな。俺は小羽専門なんだよ。
他の女は専門外だ」
「それ言ってて恥ずかしくないわけ?」
「別に?」
至って真剣な左和季君に、美喜矢君は呆れた様子でため息を吐く。
すると。
こっちを見ていたはずの左和季君が、睨むように後ろを振り返ると。
ーーパシッと手で、何かを受け止める。
数秒遅れて、私も隣にいる左和季君に習って後ろを振り返ると。
有栖川さんが人形の様に崩れることのない顔立ちで微笑んでいた。