【完】狂犬は欲望中毒。
「小羽ちゃん」
左和季君に手伝ってもらって、バイクの後ろに乗せてもらうと。
集団から抜け出してきた松茂さんが、後ろで嫌そうに歩いている美喜矢君を連れて、声をかけてきた。
「松茂さん、すみません。何の関係もない私が来ちゃって……。」
「いや、それは別にいいよ。こういうのは人の数が多ければ多いほど楽しいからな。」
柔らかい声色で言う松茂さん。
松茂さんって本当に優しいよね……。
さっきの騒ぎでまだ少し心臓が落ち着かないけど
松茂さんの優しさで強張っていた体も脱力感を覚える。
「てかさ、あんたマジで気を付けなよ」
さっきまで月に目を向けていた美喜矢君が、松茂さんの後ろで口を開く。
「気を付ける……?」
「さっきのこともう忘れたわけ?
あの雪紅の女に目つけられたんだから、警戒しろって話」
「……うん?」
「なにその腑抜けた返事。」
「だって……もう有栖川さんとは関わるつもりないし」
「あんたはそうでも、あっちはそう思ってないかもよ?
まあ、あんたに関わるというよりも……左和季の方にちょっかいかけそうだけどね。」
「えぇ!?」