【完】狂犬は欲望中毒。
遮る建物がないせいか、街にいる時よりも風の当たりが強い。
ジッと俺を見る美喜矢に、飲みかけのコーヒーを差し出すと「いらない」と断られてしまう。
「言いたいことあんなら言え」
「別に。僕はただ、今あの女と会ったらまた狙われるんじゃないの?って思っただけ」
「あの女って、小羽のことか?」
「まあね。弱み握られると左和季だって動きづらいんじゃないの?」
「……」
間違いない。
美喜矢の言うことは正しいな。
「まあでも、ただでさえ学校違うのに、これ以上会う時間がなくなるのは……いや、想像しただけでやっぱ無理だわ。あいつに会わねえと無理、死ぬわ」
「左和季が我慢なんてありえないもんね」
「いやこう見えて小羽と付き合ってからは我慢の連続だぜ?よく生きてられるな俺」
「自分で言う?それ。……まあ会う会わないは左和季が決めることだけどね。」
「お前結構心配性だよな」
「キモいこと言わないでくれる?」
「ツンデレじゃねーか」
「ねぇ、殴ってもいい?」