【完】狂犬は欲望中毒。
大きな目が逸らすことなく見つめてくる。
……他の女を見ても、やっぱ小羽の顔が思い浮かぶんだが。
これってもしや異常か。
「そんなことはどうでもいいけど、僕たちを襲ったあの男たちの正体知ってんの?
なんでアンタを見てあいつら逃げるわけ?」
有栖川の登場によって面倒事が重なったと
さっきよりも不機嫌な美喜矢がため息混じりに言う。
「あの人達の正体は分からないけど、多分噂の『族狩り』じゃないかしら。
あと私達を見て逃げたのは、君たちと私達雪紅の人数合わせてまともにやりあってたらキリがないんだと判断したんじゃない?
まあ、そこらへんはよく分かんないけどね。
私達女だから、女相手に逃げてくれるのも一か八かだったし?」
「ふーん、まあ言いたいことは分かるけど。
別に助けてくれなくてもよかったんだけど?
僕と左和季で十分追い返せた」
「君、蛇狼の浅野君でしょ?
集会にいたなら少しは察したらどう?」
「はぁ?」
「私はね、助ける助けないじゃなくて。
そこに五月女君がいたから立ち止まっただけ。」