【完】狂犬は欲望中毒。
夜風に靡く乱れた髪を整えながら有栖川はバイクに乗って、俺の方に視線を戻す。
「今日のところは大人しく帰ってあげる」
「まるでまた会うみたいな言い方だな。」
「会いたかったら会いに行くのが私なの。
好きな人には理由がなくても会いたくなるでしょ?」
「……」
「また何かあったら、助けにきてあげるね。」
「必要のない助けだ」
「じゃあね~」
人の話に耳を貸さない有栖川は、バイクを発進させ夜道の奥へと消えていく。
「完全に狙われてるね、左和季」
言いながら、今日何回したか分からないため息を吐く美喜矢。
「小羽以外興味ねぇよ。」
「言うと思った。……族狩りなんて言ってるけど、雪紅があのタイミングで来るなんて流石におかしいから。
さっき襲ってきた奴らの正体は僕の方で探っとく」
「あぁ。俺も何か分かったら連絡する」
面倒事はすぐに片付けねーと。
危険が付きまとう俺の側にいる小羽から、できるだけ危険を遠ざける。
錆びた遊具が風で軋む音を聞きながら、今はそのことしか頭になかった。