【完】狂犬は欲望中毒。
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週明けは休みを挟んだ分、とれたはずの体の疲れとは違ってこんどは心の方が憂鬱を嘆き始める。
「いらっしゃいま……っ」
陳列棚に足りない商品を補充して終えた直後。
笑顔でレジに入ると、ちょうどお客さんが商品を手に取りやってきた。
レジにお客さんが来るなんて当たり前のことなのに。
そのお客さんが……有栖川だったことに、驚きを隠せないでいる。
「お久しぶりね、"乙川"さん」
「……っ、なんで名字知ってるんですか?!」
「そこの名札に書いてあるじゃない」
有栖川さんに指をさされ、勢いよく制服に付いている名札を見て恥ずかしくなった。
過剰に反応しちゃって……今の私、なんだか間抜けみたい。
「ついでに言うと名前も知ってるよ。
五月女君が呼んでたもんね、『小羽』ちゃんって」
「……」
「ふふ、警戒心丸出しで可愛いわね~。」
「……私に何か用ですか?」
「あら、それが客に対する態度?」
「……」
「私はね、ただ。小腹が空いたからコンビニに立ち寄っただけよ?」