【完】狂犬は欲望中毒。
中に入るが、人ひとりの気配もない。
……まさか騙されたんじゃねぇだろうな?
闇に溶け込む様にどんどん奥に進んでいく。
携帯のライトで辺りを見渡すが、やっぱり小羽の姿が見当たらない。
「……小羽」
焦る気持ちと一緒に小羽の名前を呼んだ、次の瞬間。
奥の部屋からガタリと物音が聞こえた。
慌てて部屋の中をライトで照らすと。
その瞬間、誰かが俺を抱き締める。
「……五月女くん……っ」
今にも泣き出しそうな女の声。
その声に違和感を覚える。
……小羽じゃない。
貸してやってもいない俺の胸で泣く女の肩を掴んで離すと。
やっぱり小羽じゃない。
「……なんでお前がこんなところにいんだよ、有栖川」