【完】狂犬は欲望中毒。
クスクスと笑う有栖川。
さっきまで泣いてたのは演技か?
まあ、どっちでもいいが。俺には関係ないし。
「……」
それにしても、小羽じゃないならここに居たってしょうがない。
建物から出ようと、砂利やらガラスの破片やらで隠せない足音を鳴らせながら引き返そうと、後ろを振り返ると。
「待ってよ」
ーーギュッと背中に、自分とは違う他人の体温を感じる。
「さっき離されたばっかりだろ?つか、なに許可なく俺に抱きついてるわけ?」
「……」
「聞いてんのか」
答えない有栖川に苛立ちを覚える。
振り払おうとした瞬間、抱き締める有栖川の力が余計に強くなる。