【完】狂犬は欲望中毒。
好きでもない女に甘い言葉を吐かれ、無気力になった体を有栖川は自分の方へ向かせる。
「あの子じゃ、五月女君を満足させてあげられないと思う」
「……」
「色々と我慢してるでしょ?」
「……」
「私だったら、五月女君をもっと楽しませてあげられるよ?……我慢しなくたっていいから。」
潤んだ瞳で俺をジッと見つめる有栖川は、背伸びして唇を近づけてきた。
その唇が触れそうになった瞬間。
手のひらを有栖川の口に押し付けた。
「さっきから勝手なことばっか言ってんな。」
「……」
「俺を満足させられるのは小羽だけ、お前じゃ全然足りねーよ」
「……っ」
我慢してないって言ったら嘘になるが。
その欲望すら満たせるのも小羽だけなら、他の女を求めたところで意味がない。
それに、別に体の関係だけが男女のすべてって訳じゃない。
あいつに一生すんなって言われんなら、我慢してやらなくもないけど……多分、うん多分。