【完】狂犬は欲望中毒。
有栖川に押し付けていた手を離す。
女のプライドが傷ついたのか、あれだけの誘い文句に乗らなかった俺を恨めしげに、顔を赤くさせながら見る有栖川。
「つかお前、なんか企んでだろ?」
「……っ、なに急に」
「こんなところで俺を誘惑して……それで終わりか?」
「……」
「さっきから不自然だと思ったんだわ」
小羽をだしに俺をこんな所に呼び出した瞑静の奴がひとりもいない。
居るのは有栖川ただひとり。
雪紅は基本、総長をひとりにはしない。
女の暴走族は狙われることが多いから、ひとりにはなりたがらないはずだ。
しかも有栖川は拉致られたくせに全然助けを呼ぼうとしないどころか、俺を誘惑する余裕は持ってる。
動揺して当然の状況なのに。