【完】狂犬は欲望中毒。
「左和季、最近すごく機嫌がいいね。」
ソファに座ってバイク雑誌を捲っていると、後ろから聞こえてくる声に反応し、流し目で見る。
「最近面白いことがあってな」
「へぇー、ひとりで瞑静の奴等とやり合ってからずっと機嫌いいじゃん。ドーパミン溢れ出ちゃってる感じ?
つか傷だらけ、しかもスウェット姿で帰ってきた時は驚いたよ。
敵に嫌がらせでもされた?」
ソファの背凭れ部分に手をつけて面白おかしそうに笑うコイツは浅野美喜矢。
食えない男で何を考えているかさっぱり分からん。
正直苦手だが、同い年ということもありよく喋る。
"チーム"メイトとしては特にな。
俺が属する暴走族、【蛇狼】は、作られて2年にはなるがこの地域では他の族と比べると出来たばかりのポッと出のチームらしく。
新しいチームなら尚更、芽を摘もうと狙われることなんか日常茶飯事。
治安の悪いこの町では、よく族潰しが起きる。
不良の集団。
それに暴走族同士で潰し合うのは当たり前。
だったら先に潰しておくかと、ゆっくり蛇の様に締め付けるが如く、敵の奴らひとりひとり狙っていったつもりだったが。
なんせ不器用だからな、気づかれるのには時間の問題だった。
まだ残っていた数人の敵相手に仲間を呼ぶことはせずひとりで挑んだはいいが
いくら俺が強いと言ってもただじゃ済まされない事は分かってはいた。
まあ何とかひとりで相手を潰せたから良しとしよう。