【完】狂犬は欲望中毒。
ロックがかかって、窓も開いていない車内で助けを呼ぶことも抵抗すらできないことに頭がおかしくなってしまいそうだ。
俯いていた顔を上げ窓の外を見ると、建物がなく、辺りは木で囲まれていた。
揺れ動く車のスピードが落ちていくのを感じる。
「着いたぞ」
隣に座っている男が平然とした顔で言う。
「おりろ」
「……」
「おりろって言ってんだよ」
ガンッ!と車のシートを蹴る男に驚いて目を細める。
怖い。
従わなかったら……何されるか分かんない。
ここは男の言う通りにした方がよさそうだけど……どうにかして逃げなきゃ。
震える体で車からおりると、車を運転していた金髪の男が「俺にもその女、後で貸せよ」と男に笑いながら言っているのが聞こえた。