【完】狂犬は欲望中毒。
乱暴に私の胸ぐらを離す有栖川さん。
フラついた足が力を失くし、その場で尻もちをつく。
「ごほっ……!」
「咳き込んじゃってかわいそー。」
「うちらの総長あんまり怒らせない方がいいよ?怖いから」
甲高い声で笑う取り巻き。
咳き込んで上手く言葉がでないまま、有栖川さんを見上げると。
彼女はさっきの怒りとは打って変わって、上品に笑ってみせる。
「ごめんねー、乙川さん。
君見てるとついついイライラしちゃって、酷いことしちゃった」
「……」
「でもこんな事になってるのも、全部五月女君が悪いんだよ?
五月女君が私のプライド傷つけたから、私もね?彼に仕返ししなくちゃ」
「……左和季君が有栖川さんのこと傷つけたなんて、そんなの勘違いじゃ」
「うるさい黙れ」
「……っ」
表情をコロコロ変える有栖川さん。
ピリついた雰囲気が私の口を黙らせる。