【完】狂犬は欲望中毒。
チラッと左和季君が有栖川さんの方を見るから私も釣られて同じ方向に目を向かせる。
「ちょっと……!離しなさいよっ」と抵抗する有栖川さんを松茂さんは何とか車の中に乗せドアを閉めると、疲れきった顔でため息を吐いていた。
ジッと車の窓越しで有栖川さんが私じゃなくて、左和季君を見ている。
左和季君は興味がなさそうに目を逸らした。
「族狩りの正体が瞑静だと知っていて匿っていた雪紅は重罪だろ。
雪紅の件は俺が片付ける」
「珍しくやる気じゃん、左和季」
「まあ、小羽に手出した責任くらいはきっちりとってもらわねーとな。」
左和季君から黒いオーラが見える……。
本気で怒ってくれるのは嬉しいけど、無理だけはしないでほしいな。
「車呼んどいたから、それに乗って帰りなよ。
その子しばらく動けなさそうだし、バイクじゃ危ないでしょ。
僕は車で来たから自分のバイクないし、左和季のバイクに僕が乗ってガレージに戻しておいたあげる」
「あぁ、悪いな美喜矢」
「……素直な左和季とかキモいからやめてくれる?
じゃあね。」