【完】狂犬は欲望中毒。
「よう」
「……なんでいるの?」
「たまたま、通りかかった」
バレバレな嘘をからかう様に言う。
こんな人目が多く娯楽もねー地味な場所、通り道として使っても普段好んで来るわけない。
「……左和季君、あの後大丈夫だった?」
「ん?」
「雨の中帰っちゃうし、ほらお父さんのスウェット小さかったからお腹見えてたでしょ?
……風邪引いたんじゃないかって、ちょっとだけ心配してたの」
迷惑かけたのはこっちなのに。
どこまでもお人好しだな、こいつは。
「……おかげさまで引いたぜ?風邪」
「えっ」
「弱っちまってるせいか、お前に会いたくなった」
「……」
「とか言ったら、さすがに台詞がクセェか?」
「……私真面目に聞いてるんですけど」
「心配して損したって顔してるな」
「正解」
ククッと喉を鳴らせて笑う。
少し怒った顔を見せる小羽は、何も言わずマンション内に入ろうとする。
「待った」
小羽に近づき、軽く肩を叩く。
強気な上目遣いで俺を見る。
「左和季君意地悪だからもう喋らない」と子供みたいな事を言い始めるもんだから、また笑えてきた。