【完】狂犬は欲望中毒。
「あっ、あの……」
思いきって声をかけてみる。
けど、もちろん返事はない。
怪我してるみたいだし、とりあえず救急車を呼ぼうと鞄から携帯を出すけど。
すぐ近くの方で、パトカーのサイレンが音が聞こえてきた。
次第に雨の強さは増していき、私の冷や汗は滝の様に流される。
雨の日にパトカーなんて、ミステリー小説によくある大犯罪を匂わせる展開すぎる。
昔から、幸運に見せかけた不幸な目に遭うのが上手な私。
例えば、新作のアイスクリームを買ったけど
もう二度と食べたくないと思うほどそれがすっごく不味かったのに、棒に『当たり』と嬉しくない文字が書いてあったり。
半信半疑で買った宝くじ。
一等が当たった時なんか、目玉飛びでちゃうかってくらい両親と大喜びしたけど。
そのせいで親が冒険家になんかなっちゃって、海外飛び回ってるし。
おかげで独り暮らしになった私は、貯金はたくさんあっても不安なのでバイトしながら高校に通ってる。
とにかく、幸運に見せかけて不幸なんだ私は。
けど。
住んでるマンション前で男が倒れてるなんてこの状況。
不幸以外の何者でもない。