【完】狂犬は欲望中毒。
仕方なくお茶を飲み干し紛らわせる。
……っと、もうこんな時間か。
さすがに暗くなる前に帰らないと、気になる女とふたりっきりという状況は理性が保てない。
顔、見に来ただけだったのに、長居しちまった。
床についた手に力を込めて重い腰を上げようとした時。
「どうして……マンションの前で倒れてたの?」
ここぞとばかりに聞いてくる小羽。
帰ろうとしてる俺にとっちゃ、タイミングが悪すぎる。
まだだ。
まだ言えない。
暴走族なんて言ったら、コイツはもう俺と関わらねーだろうからな。
怪我をして倒れてる、それだけでもコイツにとっちゃ怖い存在でしかないつーのに。
口に出して言ったら、コイツにとっての現実になっちまう。
だから、まだなんだよ。
もっと俺に情が湧くまで言えねーな。
俺からは逃がさない、絶対に。