【完】狂犬は欲望中毒。
「さあ、なんでだろうな」
「……また誤魔化した」
「ハッ……男が怪我なんてダセーだろ。
気になる奴相手に言いたくねーだけだ」
上手いこと躱せているかは知らないが、今度こそ腰を上げ玄関に向かう。
そんな俺を見送る小羽は、心配そうに俺を見つめていた。
……ちょっとだけ芽生えてんな、コイツの中の俺への情が。
でもまだだ。もっと深く、自分から絡みついてくるまで溺れろ。
「腹出して寝んなよ、小羽」
「それはお父さんのスウェット着た左和季君じゃん!
あっ、それで思い出した……制服」
バタバタとワンルーム内を小走りするコイツは忙しい奴だ。
あらかじめ茶色い紙袋にシャツが入れられ用意されていた、それを受け取ると返せたことにホッとした小羽の顔が目に映る。
モノを返された、ただそれだけで関係が終わるわけないだろ。
「また会いに来てもいいか?」
「……へ?」
「まあ、勝手に来るけどな」