【完】狂犬は欲望中毒。
言う通りって、全然言う通りにしない左和季君が私をバイクの後ろに乗せる。
「せ、せめて行き先を」
「内緒。着いたら教えてやるよ」
「それじゃあ意味ないじゃん!」
「着くまでドキドキしとけ。
もしかしたら吊り橋効果で俺のこと好きになるかもな」
「……」
「そこ黙んな。
落ちない様にしっかり掴まってろよ」
バイクなんて乗ったことないから、すっごく不安だったけど。
左和季君のお腹に手を回したとき、ドキドキしすぎて
自然と密着するお互いの体に違った緊張を感じる。
行き先なんて告げられず、どこに行くかも分からない背中に、ヘルメット越しに額を当てる。
もうどうにでもなればいいと思う。
怖いと言うよりは驚きの連続。
助けてくれたり、心配してくれる彼に正直もう警戒心は抜けきっていた。
だからかな、今この瞬間
疑わずにバイクの後ろに乗ってられるのは。
けどやっぱり、行き先を告げられないのは不安なんだけどね。
危険な場所に足を一歩踏み入れる状況だってことをこの時の私は分かっておらず。
左和季君の背中を感じながらそんなことを考えていた、