【完】狂犬は欲望中毒。
「……というわけだ」
「えっと、あの。左和季君ごめんもう一回最初から言ってもらってもいいかな?」
「面倒な事になった」
「あっ、うん。やっぱり最初っから言わなくていいや。これって現実の話なんだね……うんうん理解した」
「……」
「……、って、え?これって本当の話?」
「まったく理解できてないな。」
小羽を蛇狼の隠れ家でもあるコンテナに連れてきて数分が立つ。
蛇狼のこと。
俺がその蛇狼の一員だってこと。
なんであの日、小羽の住むマンションの前で倒れていたか。
この数分の間で、俺について頭に叩き込めるだけの事は教えた。
が、小羽の反応はそれはそれは世間一般の反応で……意味が分からないと、見るからに取り乱していた。
「……だから左和季君、マンション前で倒れてたんだ。やっぱりよくない事で倒れてたんだね」
「引いたか?」
「……え?」
「お前この手の話嫌いだろ。
だから敢えて言わなかった。この先も言うつもりはなかったんだがな……」
「……」
「小羽を危険に晒しちまった時点で、もう隠す気はない。
お前が嫌だったら俺は……」
その先を吐露しようとした時。
なぜか慌て始める小羽が、座っていたソファから勢いよく立ち上がる。
「ちが……っ、左和季君を助けたのも、不良に絡まれてるところをむやみに割り込んだのも私だよ?
だから……」
「……」
小羽がギュッと拳を握る。
「もう……関わらないなんて言わないで」
「……は?」
「……え?」