【完】狂犬は欲望中毒。
「さわきくん……」
「……」
「……寝た?」
「いや、起きてる。」
軽く上半身だけ起こして横を見る。
カーテンに纏わりつく様に、外の月明かりが部屋の中を淡く見せているおかげで
左和季君が目を瞑りながら喋っている綺麗な顔が見えた。
抜けた力でまたベッドへと身体を沈める。
「左和季君」
「……どうした」
「助けに来てくれて、ありがとう。
まだ言ってなかったね。」
「そうだっけ」
「そうだよ」
口数の少ない左和季君が、私とは反対方向に体を向けたのが音で分かった。
なんであっち向いちゃったんだろう……。
不思議というよりも、胸の奥がモヤっとする。
「小羽が……『ひとりで帰る』とか、メッセージ送ってくるから、こっちは慌ててお前のバイト先までバイク飛ばしただよ。
そしたらマジでひとりで帰ってやがる。」
「あっ……コンビニにも寄ってくれたんだ、ありがとう」
「別に。巻き込んだのは俺だしな。」
「……」