【完】狂犬は欲望中毒。
また、胸が痛いくらいに鳴る。
すっ……好きって言った?
なんでこんな状況で言うの。
お願いだから意識させないでほしい。
じゃなきゃ、拒めなくなる。
左和季君が『欲しい』って思っちゃうよ。
左和季君の唇が軽く私の首筋に触れる。
混乱した頭が少しだけ残った理性に命令をし、左和季君の胸板をまた強く押させた。
「だっ、だめ……」
「……」
「だめだから、絶対」
こんな状況でなんて、いけないと思う。
左和季君への気持ちが分からない私が、今左和季くんを受け入れていいはずがない。
だけど、確かに私は彼に惹かれ初めてるんだろうなって思った。
その証拠に嫌じゃない、この状況。
でも付き合ってもいないのに、彼を受け入れるわけにもいかない。
「"絶対に、駄目"か」
「……」
「こうもハッキリ言われると、さすがの俺でも傷つくな」
「ごめっ」
「謝んな」
「……」
「別に責めるつもりはない。」
「……」
「それに」
軽いリップ音が耳を刺激した。
一瞬だけ耳に熱を感じ、その熱が全身に伝わったとき。
左和季君は体を起こし、私を見下ろしていた。
「諦めるつもりもない」
「……っ」
「待ってやるよ」
「なっ、なんで上からなの」
「俺だし?」
でた、左和季様降臨。
「言っとくが絶対逃がさねーからな」
「……」
「覚悟しろよ」