【完】狂犬は欲望中毒。
「……っ」
町を数時間だけ焦がした夕陽は、眩しさで目を閉じさせ睡魔に俺を襲わせる。
「左和季欠伸なんかして眠そうじゃん。
今日はもう帰ったら?」
横目で俺を見ながら美喜矢が言う。
「バカ言え、こんな日に眠ってられっか。」
今日は下っ端も含め蛇狼全員で集まり、夜になる前にバイクを走らせていた。
そろそろ別のチームも集まる暴走族の集会がある。
たまにだが敵のチームの奴が、他のチームや俺らのチームに紛れていることもあり
いつ誰に裏切られるか分かるように、幹部は全員の顔を覚えていないといけない。
数の多い世界だ。
いちいちチーム丸ごと相手にしていたら切りがない。
だから敵は気を緩ませてから、一気に総長に向かってくる可能性がある。
休憩にと集まった橋の下で、全員の顔を目で風を切るように見る。
今のところ不審な奴はいない。
そもそも蛇狼の中で裏切り者が現れる可能性は少ない。
全員、相手が喧嘩を吹っ掛けてこなきゃ正当防衛として手を出すこともないし
人のやることに対して口出しもしない。
自由気ままな連中が、バイクを走らせるためだけに集められた様なもんだ。
チームとしての全員の相性は抜群だ。