ねえ、気づいてよ……
「むしろ、強引じゃなかったら、入ってなかったかもしれません」


「そっか」


笑いあったと同時に歓声が聞こえてきた。


相手のチームのベンチから。


その状況に拓馬先輩の顔が引き締まる。


私も、穏やかじゃない心境に陥る。


先制点、決められたんだ。


「切り替えろー!」


拓馬先輩が隣で叫ぶと、怜が頷いたのが見えた。


ぎゅうっと、自分の手を握りしめる。


全身に力が入ったみたいで、足がズキズキ痛んだけど、そんなの気にならなかった。


そのまま時間が過ぎて、前半終了。


ハーフタイムのベンチは、重たい空気だった。


そりゃ、1点決められて動かないから気が重くもなる。


その空気を変えたのは、1人の1年生だった。


「楽しいですね!」


その子の言葉に全員がハテナを浮かべる。
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