ねえ、気づいてよ……
「拓馬先輩?」


何気なく聞いてみた。


「まあ、そんなとこ」


あれ、なんか想像の反応と違う。


なんか引っかかったけど、深く追求するのはやめた。


「荷造り、手伝えなくてごめんね」


「いいよ。できるだけは手伝ってもらったし」


「ごめんね、いってきまーす」


「いってらっしゃい」


ごめんね、怜。


怜が荷造りして、何もなくなった部屋を見たくなかった。


見たらきっと、泣いちゃう。


だから、ごめんね。


申し訳なく思いながら、家を出た。


「おまたせ!」


待ち合わせ場所には、もう美奈がいた。


「ううん。まだ待ち合せ前だし。行こっか」


ちょっと遠くまで電車で向かう。


「涼音、大丈夫?」


「ちょっと、ヤバいかも」
< 113 / 272 >

この作品をシェア

pagetop