ねえ、気づいてよ……
「涼音、入るぞ」


次の日、ガチャっと部屋の扉が開いて、怜が入ってくる。


「え、ちょっと......」


戸惑い気味の私に、怜はお構い無しに床に座る。


「なんで昨日、帰ったの」


不機嫌そうに怜は言った。


「なんか、仲良さそうだったし。久しぶりみたいだったから」


怜が呼び捨てで名前を呼ぶ人なんて少ないって、知ってるんだから。


名前で呼ばれてたあの子は、絶対に親しい。


「だからって、置いて帰るなよ......」


「久しぶりに会えたんなら、私よりあの子優先した方がいいでしょ?」


「俺は、涼音と帰りたかった」


当たり前のように言われて、不本意にも頬が熱くなる。


「あの子、だれ......?」


怜の甘い言葉は、私の言えなかったことを簡単に引き出す。
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