ねえ、気づいてよ……
ニコッと微笑んだ愛香さんは可愛いのに大人びていた。


「香山涼音です」


そう言ったところで、飲み物が運ばれてきた。


愛香さんは、砂糖もミルクも入れずにコーヒーを飲み出した。


対して私は、アイスティーにガムシロップを入れる。


「ねえ、涼音ちゃん。怜くんと、別れてくれない？」


「......」


アイスティーを飲もうとしていた手が止まった。


「聞いてくれる？私と、怜くんの話」


「はい......」


ここで聞かなかったら、愛香さんに負ける気がした。


聞いちゃいけない気もしたけど。


「怜くんと私ね、許嫁なの」


聞かなきゃ、良かった。


すぐに後悔が襲ってくる。


「それを決めたのは、兄弟だった私たちのおじいちゃん」


ああ、もともと、私に勝ち目なんてなかった。
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