ねえ、気づいてよ……
また今度という気持ちを込めて、怜に手を振って反対側の私の家へ駆け込んだ。


「ただいまー」


「あ、おかえり。もうすぐご飯できるけど、お腹に余裕ある?」


「もちろん」


そう笑って言ったけど、心は泣いてる。


私、取り繕うのが上手になった。


我慢するのも。


こんなに気分が沈んでいても、お腹が空くわけで。


夜ご飯も、誕生日ケーキもしっかり食べた。


お風呂も入って、部屋にこもると張り詰めていた気持ちが途切れて、涙が溢れてくる。


「......れいぃ」


甘えて、この名前を呼ぶことも許されなくなるのかな。


幼なじみのままだったら、離れなきゃいけなくなることもなかったのに。


ううん。


そんなこと、考えちゃダメ。


自分と怜の気持ちを否定するようなこと、考えちゃダメ。
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