ねえ、気づいてよ……
「涼音。本当に俺が嫌がると思った?」


首を横に振れば、さらに視界がぐちゃぐちゃになった。


「でも、愛、先輩、が......っ」


ついに伝うだけだった涙は、ポタポタとアスファルトの色を変え始めた。


「涼音、俺の言うことは、本心だから。聞いて」


聞きたくなかった。


だから、ぎゅっと目を閉じて、耳を塞いだ。


でも、手に暖かくて大きいのが重なって、それは防がれた。


「ちゃんと、聞いて?」


「やだ......」


「涼音......」


切なそうな声に、聞くしかなくなってしまった。


「聞く、けど、優しく言って......」


その言葉を聞いて、怜が話し始めた。


「涼音、俺が涼音を嫌がることなんて、一生ない」


「嫌いになんて、絶対ならない」
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