ねえ、気づいてよ……
『怜くん!珍しいね電話なんて!』


嬉しそうな声に、ため息が出そうになる。


「愛香、涼音に許嫁のこと、なんか言ったか?」


『おじいちゃんがもうそろそろって伝えたよ。あとは......あっ!怜くんが抱きしめてくれたってことも話したかな』


最悪だ......。


優しい涼音が愛香のじいさんのことを聞いたら、身を引くに決まってる。


それに、あの時抱きしめたのは愛香であって、俺は何もしてない。


「......っ。そうか」


『怜くん、もしかして振られたの?』


ちょっとだけ、嬉しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。


『じゃあ、私と婚約してくれるよね!』


「しねぇよ。俺は、なんとしてでもまた涼音と一緒になりたい。涼音以外と付き合う気も、結婚する気もねーから」
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