ねえ、気づいてよ……
すっと、顔を横に背けた。


「あいつに、何されてんだ?」


「......」


「言えよ」


鋭い、低い声。


怜が怒ってる時の声。


昔から、怜を心配させるとこんな声で怒られてた。


「心配、してくれてる?」


「......っ。話そらすなよ」


正解を言い当ててしまったみたい。


なら、答えはひとつ。


「ほんとに何もないから。大丈夫、ね?」


心配は、かけたくない。


もう、何をしても嫌われないっていうのはわかってる。


でも、必要以上の心配はかけたくない。


怜とは、ずっと笑ってたいの。


「涼音......」


怒りを含んだ声。


「怜と2人の時は、笑ってたい。こんな話したら、笑えないよ......」


「涼音......」


次は、切なそうな、寂しそうな声だった。
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