ねえ、気づいてよ……
あの子のお母さんも頭を下げたけれど、怜の両親の言葉に涙していた。


「ほら、あなたには家庭もあるでしょ?もう十分気持ちは伝わったから、ね?」


「本当に、申し訳ございませんでした。そして、ありがとうございました」


お母さんが押し切る形で、怜のお母さんと連絡先を交換して、病院を去っていった。


「涼音ちゃん、怜に付いていてくれて、ありがとう」


「そんな、私っ」


「怜は、涼音ちゃんを、大事な好きな人を守ったの。後悔なんて、してないわ。絶対に」


その時、怜の両親が呼ばれた。


何か、深刻なことを告げられているのはわかった。


「涼音ちゃん、怜の病室に移動しましょ」


「いいんですか?」


「まだ気にしてるの?」


「私は......」


私があの時飛び出さなかったら、怜は無事だった。
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