ねえ、気づいてよ……
「涼音ちゃん、これ、お願いできる?」


部活中、渡されたのは汚れたボールたちだった。


「あ、はい、洗ってきます」


「あ、1番右の水道、あれだけ水圧強いから、それで洗うと楽よ」


「あ、はい!」


最近冷たかった愛先輩からのアドバイスが嬉しくて、私は右の水道を使おうと、蛇口をひねった。


「冷たっ!」


蛇口をひねったとたん、私はベタベタに濡れた。


一瞬何が起こったか、わからなくて。


「あー、間に合わなかったか......」


後ろから、先生の声がして、やっと何が起こったのか理解した。


漏れる水が勢いよく、出てきたんだ。


髪も服もベタベタ。


「ごめんね、タオル、ある?着替え、いる?」


心配した先生にそう聞かれて、首を横に振った。


「いえ、持ってるので大丈夫です。ありがとうございます」
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