ねえ、気づいてよ……
そう言って先生の元を離れ、部室に戻ってタオル髪や濡れた肌を拭いた。


「はぁ......」


無意識にため息が漏れる。


その時、ガチャっと閉めていたドアが開く音がした。


「涼音?」


耳によく馴染んだ声で、嬉しくなる。


「怜!」


「なんでそんな濡れてんの」


「あー、水、被っちゃった」


「はぁ?意味わかんねーけど、とりあえずこれ着とけ」


そう言って、怜は、着ていたパーカーを私に手渡した。


「え、いいよ。怜、寒いでしょ?」


「いい。これ置きに戻ってきたんだし」


じゃあ、いいのかな。


「ありがとう」


そう言って笑うと、怜の頬が少しだけ赤くなった気がした。


「じゃ、髪ちゃんと拭いとけよ」


そう言って、怜は部室を去っていった。
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