ねえ、気づいてよ……
「ありがとう」


自分の身体をタオルで包んで怜の方を向いて笑う。


「ああ」


怜は、そう言って脱衣所を出ていった。


びっくりしたぁ。


髪を拭きながらリビングへ行くと、怜が私を見て目を見開いた。


「涼音、髪、なんで乾かしてねーの?」


そんなにびっくりしなくても......。


「めんどい......」


「だめ。ちょっと待ってろ」


少しすると、怜がドライヤーを持ってきて、私をソファに座らせた。


「ちゃんと乾かさないと、風邪ひくぞ?」


「これで風邪ひいたことないもん」


「ほんと、お前は......」


呆れた声が聞こえたと思ったら、ドライヤーの風を当てるだけだった怜が私の髪に触れた。


優しく、髪をほぐしながら乾かしてくれた。


「よし、できた」
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