ねえ、気づいてよ……
「体調悪くなったら、すぐ言えよ」


その言葉に頷いて、私たちは電車に乗った。


できるだけ空間を確保できそうなところに立つ。


って言っても、人が多くて全然自分の空間なんてないんだけどね。


それからしばらく乗ってた時だった。


太ももに生暖かい感覚。


人の手ってわかって、全身に鳥肌がたった。


背筋が凍って、声が出ない。


抵抗しないと思われたのか、その手は上へ上がってくる。



せめてもの抵抗で、怜の服の袖をぎゅっと掴む。


お願い、気づいて......。


「涼音?どうし......」


言葉が止まったのは、気づいてくれたから。


一瞬目を見開いて、すぐさまその人の手首を掴む。


その手の持ち主を見ると、まだ若い男の人だった。


なんか、意外。
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