ねえ、気づいてよ……
さっきより、さらに低い声。


「自分のした事を正当化しようとすんじゃねぇ。犯罪おかしたのはお前だろ」


「......怜、もう、行こ?」


私のためでも、怒ってる怜をこれ以上見たくなかった。


「涼音、ちょっと待って」


私への声は、優しい。


「謝れ。さっきの言葉と痴漢、涼音に謝れ」


「なんで俺が......」


「あ?」


圧力をかけるように言った、怜のひと押しにその人はもう、抵抗しなかった。


「悪かった。もう、しない」


その言葉に頷いて、怜とその場をあとにした。


「涼音、これからどうする?」


少し歩いてから聞かれる。


「え?」


「あんなことあったあとだし、別に買い物なら今度でも......」


「ううん。むしろ忘れるくらい、楽しみたい」
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