ねえ、気づいてよ……
〜涼音side〜


夜、怜のご飯だけ作り置きしてもう寝てしまおうかと考えていた時、ドアが開いた。


「怜......」


もう元気そうな大好きな人。


ただただ、安心した。


「涼音、さっきの、夢じゃなかったんだな」


たぶん、キスしかけたことを言ってる。


「うん。現実」


「そっか......」


無言、こんなに気まずい無言は初めてだった。


「ねえ、怜。お互い、今日のことは忘れよっか」


「え?」


なんで、そんなに不思議そうな顔してるの?


そっちの方が、怜にとっていいはず。


「明日から、また今まで通りの幼なじみ。今日、こんな空気になったなんて、もうすぐにでも忘れたい」


そう、こんな重たい空気、知らないフリしてたかった。
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