ねえ、気づいてよ……
「怜!」


前を歩く怜を呼び止める。


「やっぱ、やだ。パーカー、怜が着てて?」


「え、なんで」


「いいから!」


理由は、話さずに怜に無理やりパーカーを着せる。


「......わかったよ。でも、絶対俺の傍から離れんなよ」


「うん」


これで、怜がまた誰かに声をかけられる心配はなくなった。


満足した私は、少しだけ水際まで行って遊んだ。


「私、トイレ行ってくるね」


「じゃあ、俺、なんか適当に買ってきとくわ。これ、着てけ」


差し出されたパーカーをまたもや拒否する。


「いいよ、ちょっとだし。寒くもないしね」


「涼音......」


まだ、不服そう。


「じゃあ、行ってくる」


怜の心配そうな表情が頭から離れない。


でも、怜が誰かに声かけられるの、やだもん。
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