ねえ、気づいてよ……
少しだけ、怒ってるのがわかる。


「はい......」


渡されたパーカーを素直に受け取った。



そのパーカーを着ていると、ずっと感じていた視線が驚くほどに気にならなくなった。


怜の、魔法かな。


お昼ご飯を軽く食べてから、本格的に遊んでいると、子供の泣き声がした。


そして、声のする方がおかしい。


沖から、聞こえてくる......。


見れば、小さな子供が沖まで流されていた。


でも、あそこなら、私の足は着く。


いける。


そう思い立ったら、もう身体は動いていた。


「怜、ごめん!」


色んな意味で謝ると、着せられていたパーカーを怜に投げた。


「はっ?涼音!」


怜の叫び声を聞きながら、子供のところへ向かう。


「いった」


途中、足をグキってやって痛かったけど、そんなのどうでもよかった。
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