婚約破棄をして乗り換えた元彼と妹と私の幸せ【現代、短編】
 なんだかんだと、柚芽も欲しがるだけを卒業はしているんだけれど。それでもやっぱりたちは悪い。
 翌日。
「お姉ちゃん、昨日鞄使ったでしょ?今日は柚芽に貸して!」
「は?無理だよ。1日使っただけで使ったうちに入らないって。来月までは貸せない」
 柚芽がふくれっ面をする。
 今日は日曜日だが、どこかへ出かけるつもりなのだろうか。綺麗な桃色のワンピースを着ている。
「えー、なんで?お姉ちゃん、昨日は貸してくれるって言ったのに、嘘ついたの?今日はその鞄を使うつもりで服を選んでメイクもしたのに……酷いよ」
 いや、どうして1回使ったら使ったことになるんだろう。そもそも私に借りられるか先に確認するよね。
 私が今日も使う可能性を考えてないの?
「……わかった。じゃぁ、やっぱり貸さない。この鞄は私のものだもの。私が働いて自分用に買った鞄。柚芽が貸してほしいっていうから仕方なく、少し使った後ならいいかなって思ったけれど、もう絶対貸さない」
 柚芽が泣きだした。
「酷いよ、お姉ちゃん。貸してくれるって言ったのに、なんでそんな意地悪言うの?お姉ちゃんにも柚芽の鞄貸してあげるのに、お姉ちゃんは私に貸してくれないの?」
 酷い酷いと言いながらぽろぽろと泣き続ける柚芽にめんどくさくなって、適当に着替えて、鞄をつかんで家を出る。
 さすがに目の前に鞄が無ければ諦めるだろう。


★芽維と元彼★
「ごめんね……遅れて……」
 泣きはらした目で、柚芽は彼氏(姉の自称元婚約者)の前に姿を現す。
「どうしたの?柚芽ちゃん、何があったの?」
「うん、大丈夫……」
 柚芽は、泣きはらした目でニコリと笑って彼氏の顔を見た。
「僕には言えないこと?」
「ちょっと、鞄が……ううん、何でもないの。本当に遅れてごめんね」
「鞄?」
 結局柚芽は、姉から鞄を借りることを諦めて、いつも使っている鞄を持って来た。
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