Your Dole
罪と罰〜人間は人形にはなれない〜
お人形として過ごしていればガブリエルに何でもしてもらえるミラは、穏やかで幸せな日々を過ごしていた。

「そういえば、そろそろ茶葉が切れてしまう頃だね。街に行って買ってくるよ」

ある日、ガブリエルはそう言って屋敷を出て行った。ガブリエルがミラのそばを離れて街に行くなど、月に一度あるかないかぐらい珍しい。

「あの茶葉、本当に気に入っているものね」

ガブリエルを見送った後、ミラはふうっと息を吐いた。ガブリエルは紅茶を飲む際、茶葉にとてもこだわりを持つ。その茶葉でしかガブリエルは飲まないのだ。

ガブリエルがいなくても、ミラは動くことなくその場に腰掛けたままガブリエルの帰りを待つ。人形のように扱われる暮らしに慣れてしまい、一人の時も人形のようになるのが普通になってしまった。

「今日はどんな夕食を作ってくれるのかしら……」

そんなことをのん気に考え、空を見上げる。朝はあれだけ晴れていたというのに、今は重苦しい印象の黒い雲が空を覆っていた。
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