離してよ、牙城くん。
わかってる。
そういう世界のトップに牙城くんが立っていることも。
その、ひとりだけネクタイの色が違うスーツ姿も。
今日がなにか、特別な日であることも。
でも。
牙城くんには、ひととして大切な道を踏み外して欲しくない。
……七々ちゃんにはこういうことを言えないから、ただの自己満なのだけれど。
「わかってるよ、だけど……っ」
「……」
「牙城くんは、そんな最低なことしない」
はっきり言える。
“女狩り”がどういうものなのか。
どういう意味を持つのか。
なにも知らないけれど、きっと牙城くんはそんなことしない。
キッと牙城くんを睨むと、彼はふっと観念したように笑った。
「百々ちゃんにはやっぱ敵わねえわ」